めんまさんに「俺の事が書いてないじゃないか!」って怒られたので
今日は昨日の攻城戦におけるめんまさんの八面六臂の大活躍を
小説テイストで書き記したいと思います。
「全員、点呼ー!」「1!」「2!」「3!」「・・・!」
一人の男の野太い声が響き渡り、それに数多の声が後を追う。
これだけの大人数だと言うのに番号を叫ぶその声以外は静まり返っていることから
その集団の統率の高さが伺える。
鉄の匂いと汗の匂い、そしてあれの匂い。集まった人数は100名余りであろうか。
むさくるしい顔ぶればかりかと思われたが意外にも男女比は半々程度で、
流石に屈強な者ばかりではあったが中にはローブの隙間から可憐な肢体を覗かせている者も居る。
周囲の風景に目をやると、辺りは背の低い雑草に覆われ、側には川が穏やかに澄んだ水を運んでいる。
大きな蝶が辺りを自由に飛びまわり、かたつむりは呑気に這い回っている。
これ以上ないほどのどかな空気の中、似つかわしくない石造りの強固な建造物が五つ。
ここはブリトニア。
魔法都市ゲフェンの南西に位置する、砦の立ち並ぶルーンミッドガッツ王国の防衛線。
戦いがもうすぐ始まろうとしている。
「本日我らがこの場所に集まりし理由。それは諸君らも十分に理解していることであろう。
我らが目的、それは――。あそこに見えるB1だ!」
五つある砦にはそれぞれ番号がつけられていて、ブリトニアの頭文字「B」と組み合わせ
それぞれB1、B2・・・といった風に呼ばれている。
「B1は現在農協同盟の統治下にある。諸君らも知っての通り、圧倒的物量が脅威の同盟である。
最近この農協同盟にはなにやら怪しい噂が流れている・・・。
素性の知れない怪しい野菜を無農薬有機栽培と称し市民に売りつけている、というものだ。
さらに最近ではモンスター討伐の任務を放置し、野菜の栽培に明け暮れているという!こんなことが許されてなるものだろうか!
そこで我ら、えすぶいクローバー同盟の出番だ。
B1に巣食う悪の農協を打ち倒し、市民の平和を守る!これが我々の目的であり、任務だ!
敵は手ごわい、しかし士気旺盛な我らの敵ではない!!
ゆくぞ諸君!勝利を我が手に!!!」
「うぉぉぉぉーーーー!!!」
雄叫びを上げ、大群がB1へと押し寄せる。
戦いの火蓋が、まもなく切って落とされる。
「あのとき虫工さんが・・・」「ノヽ゚|二゚さん・・・」「おんたん萌え・・・」「ははは・・・」
ここはB1会議室。現在は談笑の場となっているようである。が、しかし。
「で、伝令ー!伝令ぃー!!
大変です、砦前にえすぶいクローバー同盟が恐らく全軍で、その数100余りです!」
敵影をいち早く察知した見張りが農協同盟首脳陣に報告をすると、なごやかムードは一変し全員の顔が一瞬にしてこわばった。
「か、掲げているプラカードによるとえすぶいクローバー同盟は粗悪な野菜の販売を差し止めるようにとの要求をしている模様です!」
一瞬の静寂。誰かが「チッ」と舌打ちすると、その音は部屋中に響き渡った。
「う゛ぃーえぬか?ねおうにか?くだらない噂を流しよって・・・。
それに騙されるほうも騙されるほうだがな。
まぁいい!総員第一級戦闘配置だ!"第2マップ"、砦入り口へ急げ!!」
指揮官の号令が走る。砦内が騒然とし、緊張で満たされる。
しかしそこは周囲から中堅勢力と目される農協同盟のこと、
数瞬後にはすっかり防衛線はできあがっていた。
戦いがいよいよ始まる。
「この扉を抜ければ、農協同盟の防衛線が張られている事が予想される。
皆のもの、気を抜くな。3、2、1で突撃するぞ。
よし、3、2、1・・・突撃!」
バガァン!
えすぶいクローバー同盟の指揮官の号令と共に、甲冑に身を包んだ屈強な男たちが三人横に並んだとしてもゆうに中に入れるほどの巨大な扉が勢い良く開き放たれる。
あまりの勢いに扉は吹き飛び、二度と扉としての機能を果たすことは能わないであろう。
えすぶいクローバー同盟の前衛達が砦の中に飛び込むと、
そこには農協同盟の魔法使い達の手により吹雪が吹き荒れ、
無数の隕石が落とされていた。
また先へ進もうにも通路一杯に農協同盟の前衛達が立ちふさがり、
一斉に槍の穂先をこちらへと向けている。
「ぬおぉぉぉおおおおおお!!!」
あるものは即効性のある効力の高い水薬を辺りに撒き散らしつつ、
またあるものは傷や体力の回復に高い効果を示す魔力を持った果実を口いっぱいに頬張りながら一歩でも先へ先へと進もうとするものの、
農協同盟の防衛線の火力の前に一人、また一人と崩れ落ちてゆく。
「畜生っ!プロボぉお~っく?」
防衛線に突入したえすぶいクローバー同盟の騎士の一人が、
魔法使いの集中を阻害するべく挑発の念を飛ばそうとするが、
意識がかき乱され失敗してしまう。
「くそっ、ロキの叫びか・・・!」
ロキの叫び。
魔力を込めた演奏で奇跡を起こす吟遊詩人と、魔力を込めた踊りで奇跡を起こす踊り子が協力し、
一定範囲内にあらゆる精神集中を妨害し、単純な行動のみしか許されない空間を作り出す一種の魔法である。
効果の範囲内に居る人間にとって、さながら耳元で"トリックスター"ロキの叫びを聞かせ続けられているかのような感覚を受けることからこの名前がつけられたという。
「ふふふ・・・。農協同盟のロキ防衛、そう簡単にはやぶれまい・・・!」
農協同盟の指揮官が防衛線の奥で哂っている。
この身に何個の隕石を受けたか分からない。どれだけ吹雪にさらされたのか分からない。
手持ちの傷薬も底を尽き、薄れ行く意識の中せめてロキの叫びを行使する二人に一太刀でも浴びせようと後ろを振り向く。
その瞬間、あれだけ重くて痛かった頭が冴え渡る。集中力が戻ってくる。
「ロキダンサー、討ち取ったりぃぃぃー!」
相変わらず降り注ぐ隕石を一身に浴びながら、味方の騎士が咆哮を上げる。
かすかに残る意識をつなぎとめ、必死で挑発の念を防衛線後方へと送る。
火力が弱まったその隙に味方の踊り子が飛び込み、砦中に響き渡る金切り声を上げる。
味方のものだと分かっているからまだ我慢できるものの、
耐性の無いものであれば一瞬行動が止まってしまうほどの大音響だ。
魔法さえなくなればあとはもう怖くない。槍を構える騎士なんてただの木偶の坊だ。
蹴散らしながら奥へと進む。
「さて、この奥にあるエンペリウムを破壊すれば我らの任務は終わる。
もうこのまま我らの勝利は確定だ――。
一足早いが、かまわんだろう。・・・よくやった!よくやってくれた!
犠牲は決して小さいわけでは無いが、農協相手の大勝利。
この戦果は素晴らしいものだろう!」
ひとたび防衛線が崩れてしまえば脆いもので、
どこからこんなにやってきたのか自分たちでも分からないほどの大群のえすぶいクローバー同盟が突入し、
数人農協同盟の人間が残って抵抗を続けているものの、
殆どの農協の人間は死ぬか、逃げるかしてしまいいまや実質B1はえすぶいクローバー同盟の占拠下にあった。
砦の所有者は、エンペリウムによって決まる。エンペリウムによって決められると言っていいかもしれない。
どういったカラクリになっているのかはまだ未解明な部分が多いが、
エンペリウムを最後に破壊したギルドのみがエンペリウムにその砦の所有権を認められるのである。
「さぁ、最後の一仕事だ諸君。砦の最奥に祀られしエンペリウムを破壊し、
この砦を我らが手中に収めようではないか!」
ぼごぉん!
扉はまたも勢い良く開け放たれ、粉々になった。
そしてそこには一人のチャンピオンが立っていた。
「ここまで来るとは・・・大したものだな。」
チャンピオンが静かに口を開く。
「だが、これ以上はやらせない。」
「やらせない、だと?たった一人で何をほざく、バカが!」
血気盛んな騎士が一人チャンピオンに向かって飛び出す。先ほどロキダンサーを落とした騎士だ。
ズブシュゥッ!
何かがするどく肉を貫く音。噴水のごとく辺りに噴き出す紅い鮮血。
背中から突き出るのは鋭い槍・・・ではなく、それは槍のごとく鋭い手!
「貴様如き、必殺"阿修羅覇凰拳"を使うまでも無い・・・。」
ズルッ・・・ドサッ。
騎士の体から腕を引き抜くと、支えを失った騎士の体は重力に従い地に伏した。
「な、何をしている・・・。相手は一人だぞ!?かかれ、束になってかかれ、行けぇぇーー!!」
えすぶいクローバー同盟の指揮官の叫びもむなしく、誰一人としてその場に立ち尽くしたまま動くことができない。
さながら蛇に睨まれた蛙のように。
「そっちが来ないのなら、こっちから行くぞ!」
ヒュッ、と短い呼気の後、チャンピオンの周囲に浮かぶ五つの光球。
即座に目にも止まらぬ速さでえすぶいクローバー同盟の一団の目の前に移動するチャンピオン。
「三段掌!連打掌!猛龍拳!伏虎拳!連っ柱崩撃ぃぃぃ!!!」
凄まじい迅さで繰り出される一連の技はどれも恐ろしい破壊力を持っていて、
次々とえすぶいクローバー同盟の兵達は戦闘不能に追い込まれていた。
あるものは関節を壊されあるものは首の骨を折られ、
あるものは壁まで吹き飛ばされあるものは胴体に風穴を開けられ、
またあるものは人間の原型をとどめる事ができないほどであった。
「う、うわぁぁぁあああっ」
そんな中、それが勇気を振り絞ったものか、それとも恐怖で混乱したのかは分からないが
呪縛から解き放たれエンペリウムへと走るものがいた。
しかし。
「指弾!」
チャンピオンの放った気弾により、エンペリウムに到着することは永遠に不可能となってしまった。
「き、貴様何者だ!」
必死の形相でえすぶいクローバー同盟の指揮官が尋ねる。
「俺?俺はただのチャンピオン。ラーメンまんさ。」
「ラーメンまんか・・・。その名前覚えておこう。だが、これ以上はさせん!」
既に砦最奥部に到着してから、半数近くが一人のチャンピオンによって倒されていた。
砦最奥部へたどり着けるほどの精鋭ぞろいであったのにも関わらず、である。
このまま手をこまねいていれば全滅すらも時間の問題であることは明白であった。
窮地のえすぶいクローバー同盟に残された最後の手。全軍突撃。
「おまぇらぁ!全員散らばって一気に突撃だ!
一人二人はやられるかもしれんがやむをえん。全員で行けばエンペリウムを破壊できるはずだ!
俺に続けぇぇー!いくぞ!突撃!!!」
「そうこなくっちゃな。」
ラーメンまんは一旦エンペリウムの前へと引き、気をためる。
「爆裂波動ぉぉー!!」
気合一閃すると、ラーメンまんの体は全身赤く赤く紅潮し、血管は青く浮き立った。
眉間には力いっぱいしわが寄り、歯は食いしばりながら口を開けられるだけ大きく開けていた。
目は暗闇に潜む肉食獣のように煌いていた。その姿はまさに修羅だった。
「ああああぁぁぁぁー!」
恐怖とも勇気とも取れない声にならない声をあげ、飢えた野獣のように一心にえすぶいクローバー同盟が突撃してくる。
その中の中央の一人に狙いを定める。
「こぉぉーっ!」
気をためる。
「行くぞ!必殺!」
「 阿 修 羅 覇 凰 拳 !!!!!!! 」
どぅおぐぅぉーーーんばしゅぅぅぅぅががががががごごごごごご・・・!!
全ての力を解き放ったその一撃の威力は凄まじく、
中心に居た人物は勿論その周辺の人間までも塵すら残さず消失し、
またその衝撃波ですら耐えられる人間は一人として居なかった。
「き、貴様・・・。た、例え我らを退けようとも・・・。
第二第三の勢力が必ず現れるだろう・・・。
その時こそ・・・貴様の、貴様達の・・・さい・・・ご・・・だ・・・。」
それだけ言い遺すと、えすぶいクローバー同盟の指揮官は息を引き取った。
「ふん、何度だって来い。何度だって追い返してやるさ!」
注)この物語はフィクションです
- 2005/05/31(火) 03:53:39|
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